
GCN海外ビジネス情報 Vol.12 マレーシア特集:マレーシアの成長の秘密とビジネスチャンス!
皆様、こんにちは!
「GCN 海外ビジネス情報」第12回目は、マレーシアのニュースをお届けします。
東南アジア諸国の中でも、若年人口や中間所得層の増加を追い風に成長を続けているマレーシア。
豊富な農業製品と製造業による外需の拡大や堅調な内需市場は、海外企業にとっても大きな魅力であり、外資を受け入れる税制や法制も整っています。
またASEAN主要6か国の2022年の実質GDP成長率(シンガポールを除く)は各国で前年から加速し総じて高い成長率を遂げ、その中でもマレーシアは、成長率1位(+8.7%)をマークしました。
また、政府は、GDPで世界トップ30入りなど国家政策10年計画をマダニ経済政策、ブミプトラ(マレー系や先住民族の総称)の経済的地位向上と他民族との経済格差解消を目指す「ブミプトラ経済転換計画2035〔PuTERA(プトラ)35〕」を発表し、更なる成長を目指しています。
今回は、このように成長を続けているマレーシアの秘訣を見ていきたいと思います。
1 マレーシアの基礎情報
2 マレーシアの経済状況
3 マレーシアの経済課題と政策
4 マレーシアの経済成長の背景
1.マレーシアの基礎情報
| ■人口と宗教 |
| 東南アジアのマレー半島に位置するマレーシアは、面積約33万平方キロメートル(日本の約0.9倍)の国土に約3,350万人(2023年マレーシア統計局)の人口を抱えています。 面積:約33万平方キロメートル(日本の約0.9倍) 人口:約3,350万人(2023年マレーシア統計局) 人口増加率:平均1.3%(過去10年) 平均年齢:29.2歳 人口構成: – マレー系(イスラム教):69% – 中華系(仏教、キリスト教):23% – インド系(ヒンズー教、キリスト教など):7% – その他:1% 人口ピラミッド:20代から40代の若年層が増加傾向。人口ボーナス期に突入。 ![]() 参照:コスモスプランのマレーシア不動産サイト「人口増加率とピラミッド」 総計ダッシュボード「マレーシア」 |
| ■主要産業 |
| 製造業:電気機器、電子機器 農林業:天然ゴム、パーム油、木材 鉱業:錫、原油、液化天然ガス(LNG) 特記事項: – パーム油は1960年代以降、ゴム栽培からの転換により拡大した主要輸出品目。 – 1981年以降の工業化政策により、電機・電子産業を中心とした経済成長を実現。 – 1991年に「VISION 2020」を発表。現在は「SPV2030(シェアード・プロスペリティ・ビジョン2030)」に基づき、国内経済格差の解消を目指す。 – 2022年時点で製造業がGDPの37.5%を占める。 ■マレーシアの産業別GDP構成 ![]() 参照:外務省:「マレーシア基礎情報」 世界経済のネタ帳「マレーシア経済」 |
| ■日本との関係 |
| 【貿易品目】 日本からの輸入: 電気製品、製造機器、化学製品、輸送機器、金属製品、原油・石油製品、鉄鋼製品、科学光学設備、食料品など 日本への輸出: 電気製品、パーム油、化学製品、原油・石油製品、LNG、機械・器具製品、金属製品、科学光学設備、ゴム製品など 特徴: – 日本の対マレーシア輸出では電気・電子関連製品が約4分の1を占める。 – マレーシアの対日輸出では液化天然ガス(LNG)などの鉱物性燃料が主要品目。 ![]() ![]() 日本企業の投資状況: – 投資件数:32件 – 投資額:101億8,650万リンギ(2023年1–12月、製造業のみ) – 日系企業進出数:1,633社(製造業836社、非製造業785社、その他12社、2023年10月時点) 出所:マレーシア投資開発庁(MIDA)、2023年1~12月統計 在留邦人数:2万657人(2023年10月1日時点) 出所:外務省「海外在留邦人数調査統計」 参照:JETRO「概況・基本統計」 |
| ■ 教育制度 |
| – 初等教育:義務教育で6年間 – 中等教育:中学校3年間、高校2年間 – 高等教育:国内外の大学、専門学校が存在 – 留学生受け入れ:ASEAN地域および中東からの学生が多い |
| ■ 気候と地理 |
| – 気候:熱帯性気候(高温多湿、年間を通して平均気温27℃前後) – 地理: – マレー半島とボルネオ島北部に分かれる。 – マレー半島側に首都クアラルンプール。 – ボルネオ島側にサラワク州、サバ州。 |
| ■ 通貨 |
| – 通貨単位:リンギット(MYR) – 為替レート:2023年現在、1リンギット約30円(変動あり) |
| ■ 公用語 |
| – マレー語(バハサ・マレーシア) – 英語:ビジネスや教育で広く使用 – その他:中華系、インド系住民の言語(中国語、タミル語など) |
| ■ 主要都市 |
| – クアラルンプール(首都):政治・経済の中心地 – ジョホールバル:シンガポールに隣接する経済特区 – ペナン:電子機器製造と観光地 – コタキナバル:観光拠点(ボルネオ島) |
2.マレーシアの経済状況
| ■マレーシアの実質GDP成長率 |
| 【ASEAN主要6か国の2022年実質GDP成長率】 ASEAN主要6か国の2022年の実質GDP成長率は、シンガポールを除く全ての国で前年から加速し、総じて高い成長率を記録しました(第I-3-4-1図)。 マレーシア(+8.7%) ベトナム(+8.0%) フィリピン(+7.6%) インドネシア(+5.3%) タイ(+2.6%) シンガポール(+3.6%) ![]() マレーシアの高成長の理由としては、以下の2点が挙げられます。 1. コロナ禍からの経済活動の再開 2. 外国人観光客の増加による観光関連産業の回復 【マレーシアのGDP成長率】 マレーシアの2022年通年の実質GDP成長率は+8.7%で、前年(+3.1%)から大幅に加速し、2000年以来の高成長を記録しました(第I-3-4-4図)。 ![]() ・需要面の特徴 -民間消費の寄与が大きく拡大 -輸出が堅調を維持 -政府消費と総固定資本形成がプラス寄与を維持 ・産業別の特徴 -サービス業の寄与が大きく拡大 -全ての産業でプラス寄与 参照:ニッセイ基礎研究所「マレーシア経済:24年4-6月期の成長率は前年同期比+5.9%~内外需が揃って改善して6四半期ぶりの高成長」 |
| ■直近のマレーシア経済の状況(2024年7-9月GDP) |
| 2024年7-9月期の実質GDP成長率(速報値)は前年比+5.3%と堅調な推移を示しています。 累計では+5.1%と前年(+3.6%)を上回り、政府は成長率見通しを上方修正しました。 主なポイント -外需依存度が高く、中国経済への依存も強いため、中国景気の減速が懸念材料 -足元のインフレは落ち着いた推移を見せ、内需環境が改善 -リンギ相場は底入れしたものの、インフレ圧力に繋がる要因が残存 -中央銀行は様子見姿勢を継続 参照:第一生命研究所「マレーシア・アンワル政権、景気と財政健全化の「二兎」を追えるか ~25年度予算は歳出規模過去最大の一方、補助金削減や増税で財政赤字の縮小を目指す方針~」 |
3.マレーシアの経済課題と政策
| ■マレーシアの経済課題 |
| 1. 外需依存の高さ -ASEAN諸国の中でも外需依存度が相対的に高い -特に中国経済への依存が顕著で、財輸出の約20%、外国人観光客の約10%強が中国(香港・マカオを含む)に依存 -鉱物資源関連の輸出では中国向けが2割弱を占めており、中国景気の減速や国際商品価格の低迷が景気の足かせとなっている 2. 内需と外需の環境差 -内需は好転の兆しを見せるものの、外需は世界経済の不透明感が強まり、リンギ安による価格競争力向上の効果が薄れる 3. 競争力の課題 -アジア通貨危機以降、高コスト・低賃金・低利益・競争力不足の悪循環が続いている(アンワル首相の指摘) 参照:第一生命経済研究所「マレーシア、景気とリンギ相場の堅調さを確認も、先行きはどうなる」 |
| 政策1: 国家エネルギー移行ロードマップ(NETR) |
| -2023年7月と8月に発表 -2050年までのカーボンニュートラル達成を目指す -具体的なプロジェクトや基金を通じて10の重要プロジェクトを展開 参照:JETRO「エネルギー移行ロードマップ第1弾、10の重要プロジェクトを特定」「エネルギー移行ロードマップ第2弾、20億リンギを投じ基金立ち上げ」 |
| 政策2:マダニ経済政策 |
| -2023年7月発表。国際競争力向上や投資誘致を通じて、GDP成長率5.5%以上を目指す 7つの目標: 1. GDPで世界トップ30入り 2. 世界競争力指標(GCI)でトップ12入り 3. 人間開発指数(HDI)でトップ25入り 4. 従業員報酬のGDP比を45%に引き上げ 5. 腐敗認識指数(CPI)で25位入り 6. 財政赤字のGDP比を3%以下に抑制 7. 女性の労働参加率を60%に引き上げ *MADANI:マレー語頭文字から付けた「持続可能性、繁栄、革新、尊敬、信頼、思いやり」の現政権の政策理念 参照:JETRO「政権初の国家政策「マダニ経済政策」、構造改革による5.5%超の経済成長目指す」 |
| 政策3: 2024年予算と財源確保 |
| -産業高度化や教育・医療分野の予算を増額 -サービス税の引き上げや高額商品税の導入で財源を確保 参照:「時事速報」 |
| 政策4:新産業マスタープラン(NIMP)2030」 |
| -2023年9月発表 -産業競争力向上、デジタル技術の革新、脱炭素化、経済安全保障を目指す 参照:ジェトロアジア経済研究所「州議会選挙を乗り越え安定したアンワル政権」 |
| 政策5:ブミプトラ経済転換計画(PuTERA 35) |
| -2024年8月発表 -経済基盤の強化、ガバナンスの改善、社会正義の推進 具体的な目標: -高技能職におけるブミプトラ比率を2022年の61%から70%へ引き上げ -ブミプトラ企業のGDP貢献率を2020年の8.1%から15%へ引き上げ -貧困撲滅と所得格差の解消 JETRO「新たなブミプトラ政策を発表、2035年までにGDPへの貢献度倍増へ」 |
| ■政策のポイント |
| -外資系企業の誘致と高付加価値産業の発展を促進 -電子・電機産業や化学分野を中心に、高賃金雇用の創出 -経済成長を通じて公平な分配と経済格差の是正 -包摂的な経済成長を目指し、すべての民族が恩恵を受けられる政策を推進 |
| ■経済成果と今後の展望 |
| -2024年第1四半期の実質GDPは前年同期比4.2%増、輸出は5.2%増 -アンワル首相は「天井の引き上げと底上げ」を強調 -天井の引き上げ:アジア経済のリーダーを目指し、BRICSやOECDへの参加を推進 -底上げ:貧困層の生活改善と質の高い収入機会の創出 -マレーシアは多面的な政策を通じて持続可能な成長を目指しており、安定した経済基盤と競争力の向上が今後の課題となっている |
4.マレーシアの経済成長の背景
| ■政府支援 |
| -マレーシア政府の政策は、産業製品およびサービス部門に深い影響を与えている。 - “マダニ経済”や国家エネルギー移行ロードマップなど、一連の経済刺激策および政策の実施を通じて、 政府は産業のアップグレードと技術革新を促進している。 -これらの政策は、産業発展の方向性と目標を提供するとともに、 税制優遇措置や財政補助金などのインセンティブを通じて国内外の投資を引き付けている。 -インフラ投資により物流およびサプライチェーンの効率を向上させ、 産業製品およびサービス部門の発展を支える堅固な基盤を整備している。 こうした取り組みが、経済成長を後押ししている。 参照:moomoo「2024 年のマレーシアの工業製品およびサービス企業および株式トップ 8」 |
| ■若年層が多く購買欲が高い |
| -マレーシアは国民の約60%が30歳以下という若年層が多い国であり、この人口ボーナスは2050年まで続くと予想されている。 -この状況により消費者市場は活発で、多くのビジネスチャンスが存在している。 -さらに、マレーシアは世界トップクラスの親日国であり、多くの日本企業が成功を収めている。 外資企業に対する優遇措置が設けられているため、製造業やサービス業を中心にビジネスを展開しやすい 環境が整っている。 参照:エンジョイマレーシア「マレーシアの人口ピラミッド:現状と今後の展望」 |
| ■活気ある製造業エコシステム |
| マレーシアの製造業は、国内経済の変化において以下のような重要な役割を担い続けている。 -国の輸出高と雇用機会創出に貢献 -世界的な不透明な状況下でも成長を支える役割を果たす 製造業が注目されるポイントは以下の通り。 -付加価値が高く、多様で複雑な製品を製造 -電気および電子(E&E)、機械および設備(M&E)、化学物質および化学製品などの触媒効果を有するサブセクターに重点 -航空宇宙および医療機器という潜在成長力が高い分野への注目 -さらに、人材プールの開発とインダストリー4.0が、成熟した産業の再活性化や新たな機会創出の鍵となっている。 参照:マレーシア投資開発庁「2021年の製造業界における主要ハイライト」 |
| ■インフラ整備/理想的なアクセスポイント |
| マレーシアのインフラは世界水準であり、以下の特徴を備えている。 -光ファイバー技術 -国際空港と海港 -手入れの行き届いた幹線道路 これらにより、アジア太平洋市場への理想的なアクセス・ポイントとしての地位を確立している。 参照:マレーシア投資開発庁「事業機会に満ちた国」 |
| ■外資系企業優遇措置 |
| マレーシアは多文化国家の特性を活かし、外資系企業に対する優遇措置を提供している。 -税制面での優遇 -高度技術や特定産業への投資に関する補助金 -投資促進地域での土地使用権 これらの政策により、外国直接投資(FDI)の促進、雇用創出、技術移転が実現されている。 また、政府は事業登録プロセスを簡素化し、外資企業の現地法人設立を容易にしている。 これがマレーシアをアジア地域のビジネス拠点として魅力的な国にしている。 参照:JETRO「外資に関する奨励」 |
このように、マレーシアは経済成長の基盤を整えつつ、持続可能な発展に向けた政策を進めている。親日的な文化、優れたインフラ、ASEANのアクセスポイントとしての地理的優位性など、海外進出を考える企業にとって注目すべき国である。 |
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| 2024年12月24日発行 発行元:INASIA合同会社 〒180-0001東京都武蔵野市吉祥寺北町1-1-1桜井ビル416号 Global Consultant Network : https://www.global-cons.biz Corporate site : http://www.in-asia.net 当メールは、弊社担当と名刺交換をして頂いた方、お問合せ・メルマガ登録頂いた皆様にお送りしています。 |
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